our picks
- 2024.08.13 Tuesday
- ボローニャであけた、あらたなとびら
イタリア・ボローニャ国際絵本原画展(以後「ボローニャ国際絵本原画展」)での入選、『誕生花で楽しむ、和の伝統色ブック』の出版、海外での絵本の出版など、飛躍的に活躍の場を広げてきたオオノ・マユミさん。今回はそんなオオノさんに、ボローニャ国際絵本原画展に応募された経緯や、イタリアのボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアに行かれた時のことなどについてお話を伺いました。
*ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアは、毎年春にイタリア北部のボローニャ市で行われる児童書専門の見本市。出版社による版権の売買のみならず、展覧会や講演会をはじめとする文化イベントが多数行われ、児童書の新たな企画を生み出す場として世界中から注目されている。ボローニャ国際絵本原画展は、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアが主催するイラストレーション・コンクール。出版・未出版を問わず、子どもの本のために制作した作品(5枚1組) があれば応募することができ、新人作家の登竜門としても知られている。入選作品は『イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』として世界各地を巡回。2024年日本では東京の板橋区立美術館、兵庫県の西宮市大谷記念美術館を巡回。
AL: オオノさんは2017年にボローニャ国際絵本原画展で入選されましたが、入選した作品というのはこちらの作品ですか?
MO: はい、そうです。模様や図案を描くのが好きなので、モチーフとして構成できるファッションをテーマにした絵本を作ろう!と「COLOR & PATTERN」というタイトルでエントリーしました。ちなみに、この絵のアイデアはその後Tra Publishingから出版された「I Am a Little Fashion Designer」という絵本に活かされています。
AL: そもそもオオノさんはイラストレーターとして広告などのお仕事をされていたわけですけが、なぜまたボローニャ国際絵本原画展に応募しようと思ったのですか?
MO: ボローニャ国際絵本原画展の巡回展を板橋区立美術館ではじめて鑑賞したのが2015年、世界中から選ばれたさまざまなスタイルのイラストレーションに大きな衝撃をうけました。なんとのびやかで自由でおもしろいのだろう!と。展示作品は子どもだけでなく、大人もしっかり楽しめました。「ここで飾られるような絵を私も描きたい」と思ったのが応募のきっかけです。
私のそれまでの仕事は、大人の女性をメインにした仕事が多かったことと「絵本は子どものもの」と思い込みもあって、絵本を「遠い世界のもの」ととらえていました。でも、ボローニャ国際絵本原画展によって絵本をもっと楽しみたい!作りたい!とワクワクする気持ちがおさえられなくなって。一気に絵本を自分ごとのように感じました。
一方で、イラストレーターとして20年ほど活動を続けてきて、これまでの絵のスタイルではやり尽くした感がありました。時代性・流行に応えていく力にもズレが生じるようにもなって……できればこれからも社会の中で仕事として描き続けていきたい。そのためには一度リセットして、創作の畑を耕し直すようなレベルで何かを吸収しなければと、2015年から2年間を学びの時間にあてようと決心したのがはじまりです。その学びの場の一つが、絵本ワークショップ「夏のアトリエ」でした。これは板橋区立美術館のボローニャ国際絵本原画展の関連イベントです。
AL: ワークショップを受講してみていかがでしたか?何か新しい学びはあったのでしょうか?
MO: 発想力を育むエクササイズが多かったですね。絵本作家は、ゼロから生み出すところにいると実感しました。日本のイラストレーターの仕事は、プロジェクトの段階でいえば1〜10のなかでおそらく2〜3ぐらいの場所が持ち場で、プロジェクトのイメージ作りを担ったり、視覚的にわかりやすく伝えることが求められますね。同じ絵を描く仕事でも、イラストレーションと絵本は使う筋肉が違うと気付かされました。ワークショップの講師はボローニャ国際絵本原画展の審査員を務めたイラストレーターや絵本作家で、ボローニャ国際絵本原画展のエピソードなどをまじえながら直接指導していただけたことも大変貴重な体験でした。
AL: そして、翌年の2016年にも「夏のアトリエ」に参加されて、そして2017年のボローニャ国際絵本原画展に応募、入選されるわけですね。毎年何千人もの人が応募されるようですが、初めての応募で入選されるというのはすごくないですか? やはりワークショップでの学びが役に立ったのでしょうか?
MO: はい。私にとって、ワークショップでのアドバイスは大きかったですね。模様を描くことが好きだとあらためて気づかせていただいて、それを絵本のテーマにしようとアイデアが生まれました。きっと好きなものを描いたり楽しく取り組めたことがよかったみたいです。ボローニャ国際絵本原画展の審査員は毎年変わること、エントリー時に審査員がわからないので対策はできないので。年ごとに選ばれる作品の傾向がまったく違ったりします。
AL: 入選された年に初めてイタリアのボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアに行かれたんですよね? いかがでしたか? 初めてのボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアは。
MO: とても面白かったです……! ずっと興奮していました。見本市で、日本に翻訳版として入る前の絵本に出会うこともできますし、トークショーやワークショップなどのイベントも多く、会場中がお祭りのような熱気であふれていました。楽しくて夢中になり、あまりにも魅了されすぎて、2019年に「ボローニャブックフェアに行ってきました」というZineを制作したぐらいです。ちなみにイタリアらしさでいえば、ジェラートの屋台が会場内にありますね。商談の休憩中にジェラートを食べる姿をよく目にします。私ももちろんいただきました! しぼりたてのブラッドオレンジジュースもとってもおいしかったですね。そうそう、ボローニャは美食の街と呼ばれています。
AL: すっかりはまってしまったんですね。ところで、ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアは、出版社にとっては自社の版権を他の出版社に売ったりするビジネスの場でもあるようですが、イラストレーターが出版社に作品を見てもらったりする機会はあるのでしょうか?
MO: ミーティングで作品をアピールしたり、飛び込みでも見てもらえることがあります。作家を探している出版社は看板を掲げてポートフォリオレビューをおこなっていて、ファイルを抱えたイラストレーターの行列ができるんですよ。私もいくつかの出版社に飛び込みで見てもらったのですが、コミュニケーションの問題や作品の準備不足で良い結果にはつながりませんでした。反省点が明確だったので、翌年以降に活かしました。
AL: 具体的にはどのような準備をされたのですか?
MO: ポートフォリオだけでなく、完成に近いダミー絵本を持参したことと、コミュニケーションをしっかり取れるよう、通訳の方に同行していただきました。
AL: そこまで徹底されたんですね。
MO: 作品について説明を伝えることはできても、質問されたことを日本語と同じレベルで答えられる自信がなくて。ビジネスの相手として不安にさせてしまわないように、サポートいただきました。そのおかげで、イタリアのkira kira edizioniから「Il mio posto preferito」(わたしのおきにいりのばしょ)の出版につながりました。また、スペインのZahorí Books「Little Professionals Series」も帰国後すぐに決まりました。プレゼンテーションはパティシエの仕掛け絵本でしたが、学習要素を増やしてシリーズにしませんか?とまさかのご提案をいただきました。入選作の「COLOR & PATTERN」を気に入ってもらっていたことが大きくて、これらの絵を使ってファッションの本を作ってもいいですよと。ノンフィクションブックや実用書も好きなので、構成を変えて、パティシエ、ファションデザイナー、シェフ、ガーデナーの4冊が実現できました。ちなみに、ファッションデザイナーは入選作のアイデアを活かし子どもバージョンを描きました。
AL: これらの絵本では、ひとつの職業を取り上げ、仕事で使う道具や仕事の内容などが、オオノさんらしいシンプルでグラフィカルなタッチで分かりやすく描かれています。そして巻末には台紙とシールがついていて、子供たちが自分でケーキや洋服のデコレーションをして、読むだけではなく自分も手を動かして楽しめるという工夫がされていますが、このような絵本を作ろうというのはオオノさんのアイデアですか?
MO: はい。パティシエの仕掛け絵本にはもともとシールとカードがついていました。それを、イラストレーションはほぼそのままに、学習要素を加えて内容を再構成したのです。その際、専門性のある内容ですので、それぞれのプロフェッショナルに取材のご協力をお願いしました。おかげさまでグラフィカルでたのしく学べる絵本が作れたと思います。
AL: 制作はちょうどコロナの最中だったそうですが、すべてメールでのやりとりですか?
MO: はい、メールはもうずいぶん前から仕事にはなくてはならないものになっていますが、便利な時代に生きていますよね。海を越えて瞬時にやりとりできるありがたみをコロナ禍であらためて実感しました。印象的だったのはスペインの出版社と翻訳版のアメリカの出版社、さらに中国の印刷会社と私で4カ国間で英語のメールが行き交ったことでしょうか。時差や距離があってもインターネットでつながっていることは、心の支えになりましたね。そういえば、アートリエゾンはかなり前から海外作家を起用されていらっしゃいますよね。ワールドワイドな仕事の大先輩ですね。
AL: 弊社の場合は、海外の作家を日本のクライアントにご紹介することがほとんどですので、海外のクライアントとお仕事をされているオオノさんとは逆のパターンですが、私もコロナの時は、海外の作家さんとそちらの国はどんな状況?とお互い情報交換をしたりしていましたね。ところで、オオノさんがボローニャに通っていらっしゃった間に、2019年にパイ インターナショナルから「誕生花で楽しむ、和の伝統色ブック」を出版されていますね。こちらはどういった経緯で?
MO: 2015年の「夏のアトリエ」でお世話になったクラース・フェルプランケ氏から、「マユミは色使いがおもしろいね。色の本を作るといいよ」とアドバイスをいただいていたのですが、2017年3月から丸1年分を描きためた誕生花作品群をあるときに眺めていて、ふと「もしかしたら誕生花のイラストレーションを再編集したら色の本が実現できるのではないか?」と思いついて。アドバイスが結びついた瞬間でした。興味のある日本の伝統色の本としてさっそく企画書をまとめました。せっかくなら素敵なデザイン書をたくさん作られているパイインターナショナルで出版できたらいいなと企画持ち込みを考えていたところ、パイさんから花の絵を描く仕事をいただいて。これは運命だと思って、企画のご相談をし、編集会議に通していただきました。
AL: すごいタイミングですね。でも、そのチャンスをしっかりものにする行動力もさすがです。絵本にしても「誕生花で楽しむ、和の伝統色ブック」にしても、これらが実現できたのは、創作の畑を耕し直した2年に、「夏のアトリエ」でいろいろな刺激を受け、新しいことを吸収したことで、オオノさん自身の中に眠っていた創造力が見事開花したからなんでしょうね。まさに、本インタビューのタイトル「ボローニャであけた新たなとびら」ですね。ところで、今後のご活動についてもお聞きしてよいでしょうか?
MO: イラストレーションと作家活動のどちらも続けていきたいです。ビジュアルをとおして誰かの暮らしが楽しくなったり彩りを添えることを仕事としてできたらいいですね。絵本、広告、雑貨、テキスタイル、空間。どのような媒体でも。
AL: ますます活躍の場が広がりそうですね。これからもがんばってください。本日は貴重なお話をありがとうございました。
イラストレーターとして20年のキャリアがありながら、あえて2年間を学びの時間に当てられたオオノさん。そしてボローニャ国際絵本原画展との出会いから様々なことを吸収され、大きく飛躍された彼女のお話は、クリエーターのみならず人生で壁にぶち当たった人にもとても参考になるお話だったのではないでしょうか。オオノさんのこれからの活躍に目が離せません。
- 2022.01.24 Monday
- Kari Cialec Modenのポップな人体図
Kari Cialec Modenといえばカラフルでグラフィカルなイメージが特徴のファッション関連のお仕事を多数手がけている作家さんですが、実は、お堅く感じる医療やヘルスケア関連のお仕事もたくさん手がけています。ただ、使われた作品はまさに彼女らしい、ポップでカラフルな作品たち。人体図も彼女の手にかかるとアート作品のようです。今回は彼女にそれら医療関係のお仕事について聞いてみました。
artliaison(以下AL): 初めてあなたのvardapoteket *1のお仕事を見た時にすごく衝撃を受けたのを覚えています。というのも、日本で、ドラッグストアに限らず広く医療品、医薬品またはヘルスケア関連のお仕事で、あなたの作品のようなカラフルな人体図を使ったものを見たことがなかったからです。
Kari Cialec Moden(以下KM) : ありがとうございます!あれはとても素晴らしい仕事でした。
AL: 2012年のお仕事でしたよね?評判はどうでしたか?
KM: 確か2011年から取り掛かって、2012年に立ち上がったと思います。あの仕事は当時大変注目され、多くのブロガーやソーシャルメディアが取り上げてくれました。そしてカンヌライオンズ *2のデザイン部門で銅賞をもらいました。
*1 スウェーデンのドラッグストア・チェーン
*2 正式名称:カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル : 1954年に設立され、毎年6月に南仏カンヌで行われる世界最大規模の広告・コミュニケーションフェスティバル。
- vardapoteketの店内
- vardapoteketの店内
- 小冊子
- パッケージ
- メンバーズカード
AL: vardapoteketはまだあなたの作品を使っているのですか?それともあれは期間限定のお仕事だったのでしょうか?
KM: 残念ながらvardapoteketは2013年にスウェーデンの別のドラッグストア・チェーンのApotek Hjärtatに買収され、買収後Apotek Hjärtatは全てのコンセプトと店内インテリアを変えてしまいました。なので、悲しいことに私が描いた作品は長くは使われませんでした。ですが、Apotek Hjärtatは今、私のクライアントの一つになっています。彼らのサプリメントのパッケージ用に作品を制作したのですが、それもとても良いプロジェクトでした。
- Apotek Hjärtatのサプリメントのパッケージ
AL: どのようにしてvardapoteketのお仕事を手がけることになったのですか?確かクライアントはStockholm design labですよね?
KM: スウェーデンはとても小さい国なので、クリエイティブディレクターのBjörn Kusoffsky を友人の紹介で知っていてvardapoteketの仕事をする以前に別の仕事を一緒にやっていたのです。
AL: なるほど、そうだったんですね。ところで、クライアントはあなたに描いてもらいたいもののはっきりとしたイメージがあって、あなたは指示に従って描けば良かったのでしょうか?それともイメージ作りの段階から参加したのですか?
KM: Stockholm Design LAB は素晴らしい、そしてプロフェッショナルなブリーフィングを準備してくれていました。色や資料までつけて。資料は、パターン画やファブリックで有名なスウェーデンのJosef Frankや、私も大好きな日本のグラフィックデザイナーの小島良平さんのものだったり。そして、私にコンタクトを取る時点で彼らにはどのようなものを作りたいのか、制作したイラストをどのように使うのか既にはっきりとしたイメージがありました。それにはすごく助けられましたし、すばらしいチームワークで仕事を完成させることができました。
AL: 描く際に人体図などの資料を参考にして描きましたか?
KM: はい。インターネットで調べて多くの人体図を参考に描きました。
AL: 制作する上で難しかったことは?
KM: 難しかったのは壁紙用に継ぎ目のないイメージを作らなければならなかったことでしょうか。複雑な模様を描くのは初めてだったので。ですが幸運なことに、同じくイラストレーターである私の妹のMaja Modénが少し助けてくれてなんとか仕上げることができました。今はイラストレーターのパターンツールを使うので、ずっと簡単にできますが。
AL: このお仕事をしたことで、その後医療関係や医薬品、ヘルスケア関係の企業や雑誌などのお仕事をする機会が増えましたか?
KM: はい。この仕事は私にとって、人体図やヘルスケアをテーマに作品を描くきっかけとなりました。そして、エディトリアル、広告両方の分野で、多くのヘルスケア関連の仕事をもたらしてくれました。最近もNovo Nordisk*3 の肥満症のキャンペーンビジュアルを手がけました。これは現在も続いているキャンペーンです。(2021年12月時点)スウェーデンでは肥満症が深刻な社会問題なのです。
*3 デンマークに本社を置く世界有数のヘルスケア企業。
- Novo Nordiskの肥満症キャンペーン
AL: 今はどのようなお仕事に力をいれているのですか?
KM: 今はスウェーデンの学校のプロジェクトを手がけています。6歳から19歳の子供を対象とした、ダンスや、美術、音楽といった文化的な勉強にフォーカスし、抽象的でグラフィカルな作品やシンボルを制作しています。それらは今後様々な用途で使用される予定です。
AL: それは興味深いお仕事ですね。また、完成したらinstagram にアップしてくださいね。
KM: もちろんです。
AL: では、最後に、将来どのようなお仕事やプロジェクトをやってみたいですか?
KM: そうですね、もっと個人的な作品を制作したいですね。そしてできれば個展をしたいでしょうか。制作する時間を見つけるのが難しいでしょうが。あとは、アニメーションを勉強したいですし、ファブリックや壁紙などのパターン画ももっとやってみたいです。
AL: どれもすごく興味深いですね。是非、実現させてください。楽しみにしています。
まだまだやりたいことがたくさんあるKari Cialec Moden。今後も彼女の活動から目が離せません。
- 2021.09.08 Wednesday
- 『夏』イメージ特集!
『夏』のイメージにぴったりな作品を集めました。国内からは比佐健太郎さん、江越ミカさん、密田恵さん、カナザワカズヒロさん、そして海外からはPiet Paris (ピエ・パリ)とJason Brooks (ジェイソンン・ブルックス)、そして Stephanie Wunderlich (ステファニー・ワンダーリッヒ)です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
比佐健太郎
艶やかな女性がそれぞれに『夏』を楽しんでいる様子が描かれています。『夏』といえば太陽と海!ですが、こんなにも様々な色々の組み合わせがあることにも驚かされます。
- ©︎比佐健太郎
- ©︎比佐健太郎
- ©︎比佐健太郎
- ©︎比佐健太郎
江越ミカ
どこかアンニュイな雰囲気を漂わせるオシャレな女性たち。真夏のギラギラした太陽ではなく、リゾート地の太陽の元、のんびりと『夏』を楽しんでいるようです。
- ©︎江越ミカ
- ©︎江越ミカ
- ©︎江越ミカ
- ©︎江越ミカ
密田恵
元気いっぱいな太陽の下で、健康的に走り回って『夏』を満喫したり、涼やかに水の中を泳いだり、『夏』の味を味わったり…色々な『夏』のシーンが表現されています。
- ©密田恵
- ©密田恵
- ©密田恵
- ©密田恵
カナザワカズヒロ
日本の『夏』の代表とも言えるようなシーンばかり!どれも懐かしく、ホッとするイメージの集まりです。
- ©カナザワカズヒロ
- ©カナザワカズヒロ
- ©カナザワカズヒロ
- ©カナザワカズヒロ
Piet Paris
シャープな線でグラフィカルに描かれる作品はどれも非常にインパクトがあり、その世界観は唯一無二といっても過言ではありません。
夏の暑さを忘れさせるような爽やかな水色でまとめられた作品からは爽やかな風を感じます。
- ©︎Piet Paris
Jason Brooks
夏のギラギラした暑さを一切感じさせない涼しげな女性たち。ディティールまで描きこんであるにも関わらずシンプルな仕上がり、そして漂うラグジュアリー感は彼しか描ききれません。
- ©︎Jason Brooks
- ©️Jason Brooks
- ©️Jason Brooks
- ©︎Jason Brooks
- ©️Jason Brooks
- ©️Jason Brooks
Stephanie Wunderlich
パターンやフォルムが個性的で独特の世界観を生みだす彼女ならではの「夏」が描かれています。ありふれたシーンですが、彼女の手にかかると、尖りすぎず、万人に愛される、オシャレな家族の「夏」の1日が完成です。
- ©︎Stephanie Wunderlich
- ©︎Stephanie Wunderlich
- 2021.06.16 Wednesday
- Alessandra Scandella が創り出す水彩アニメーションの世界
弊社契約のイタリア在住イラストレーター、アレッサンドラ・スキャンデラ(Alessandra Scandella)についてはこれまでもNEWSなどで度々紹介してきましたが、今回は、彼女が力をいれて取り組んでいる動画制作について詳しく伺いました。
artliaison: ここ最近動画制作に力をいれていますね。YouTube にアップされているあなたの動画作品を拝見しましたが、(彼女のYouTubeチャンネルはこちら)いわゆるキャラクターが動くアニメーションとは違って、絵に色がつけられていく過程や、色が滲んでいく様子などを上手に動きとして取り入れ動画として成立させています。このような動画を水彩アニメーション(watercolor animation)と呼んでいるようですが、このような動画作品はイタリアで流行っているのでしょうか?
Alessandra Scandella: 特に流行っているということではないのですが、ファッションやインテリアデザイン、その他ナチュラルでオーガニックな分野で需要があります。水彩アニメーションは時として感情や共感といったものをよりうまく表現できるのです。
AL: これはあなたがYouTubeにアップしている一番古い作品ですが、これがあなたが初めて手がけた水彩アニメーション作品ですか?
Editing by Luca Mari, ASC
AS: そうです。水彩作品を動かしてみたかったのと、絵の具のしずくや水彩絵の具のもつ透明感がうまく動画に生かせるかを見たかったのです。 それに自然は私にとってとても大切なテーマですし。
AL: この作品はどうやって作ったのですか?
AS: コマ撮りしたものをつなげて作るストップモーション・アニメーションの手法で作っています。動画編集をしてくれるスタッフが、私が描いている横でひと筆ごとに写真を撮り、それをつなげて作ったのです。
AL: そして、あなたの水彩アニメーション作品で代表的なものといえば、高級宝飾店のブルガリの作品ですね。
Client: Bulgari, In collaboration with Absolute Film by Marco Genone
この作品では、滲んでいく絵の具の動きが画面に躍動感を与えていて、さらにその動きと効果音が完璧にマッチしていましたね。私も初めて見た時目が釘付けになったのを覚えています。そして、ブルガリの高級宝飾品と合わせても見劣りしないイラストのクオリティーの高さにも大変感心しました。
AS: ありがとうございます。ご存知のように、私はもともとファッションやジュエリーを描くのが大好きなので、この仕事はまさに願ってもない仕事でした。
AL: これはテレビコマーシャル用ですか?
AS: いいえ。ブルガリのVIPクライアント向けの販促用ビデオです。
AL: どういった経緯でこの仕事をやることになったのですか?
AS: クリエイティブ・デザイナー&プロデューサーのマルコ・ジーノン(Marco Genone)がYou Tubeで私の動画作品を見てコンタクトを取ってきてくれたのです。彼はAbsolute Filmsというスタジオを持っていて、非常にクオリテイーの高い広告用のビデオクリップやアニメーションを制作しています。そして、私の作品を使って動画を作る企画をブルガリに提案し、それが通って仕事になったのです。彼と仕事をするのはとても興味深いものでした。
AL: ところで、この動画はどうやって作ってるのですか?
AS: 動画にする具体的な編集作業はアニメーション制作のスタッフがやったことですので私には分かりませんが(笑)、私は、動画に必要となる線画とそれにのせる水彩の着彩部分を描いています。
AL: もう少し具体的に説明していただけますか?
AS: まず、ベースとなる絵を線画で描きます。次にその線画を別の紙にプリントして、それに着彩をします。直接オリジナルの線画に着彩しないのは、何枚もプリントして、試しに色を塗って雰囲気を見てみたり、色の組み合わせを何種類か試してベストのものを選んだりと、あらゆる可能性を試してみることができるためです。あと、これら以外にも水彩のしずくや滲みをたくさん描いています。そして、最初に描いた線画の絵と、着彩した絵、そしてそれ以外の水彩の素材をコンピュータに取り込み、それぞれ別のレイヤーに保存します。あとは、編集スタッフが、コンピュータ上で絵を組み合わせ、線や色が現れるタイミングを調節して、まるで実際に画面上で絵が次々と描かれていくように編集します。もちろん、中には実際に滲んでいく色を動画で撮影しているカットもあります。
AL: この部分ですね。
AS: はい。それもその一つです。
AL: アニメーション用に描くのと、通常のイラストレーションでは何か違いはありますか?
AS: いいえ。アニメーション用でも通常のイラストレーションでも描き方は同じです。ただ、アニメーション用には水彩のしずくや滲みなど素材として使うものをたくさん描かなくてはいけないというのはありますが。
AL: では、アニメーション用に描く場合、難しい点はなんでしょうか?
AS: そうですね、台本に書かれている雰囲気や、感性を表現することや、クライアントあるいは広告の意図を汲み取ることでしょうか。
AL: このブルガリの作品で一番難しかったのは?何か特に気をつけることはありましたか?
AS: 特になかったですね。ただ、仕事が始まる時に、仕事がスムーズに運ぶよう、プロデューサーのマルコ・ジーノンとうまくコミュニケーションを取ることには気を使いました。 その甲斐あってその後はとてもスムーズに運びました。
AL: ところで、あなたはContainer Studioというクリエイティブ集団の会社を設立したそうですね。
AS: はい。10年ほどまえに、同じように広告や出版業界で仕事をするアーティストと、広告やビデオプロジェクトなど何か一緒にやりたいと思い設立しました。
AL: Studio ASCという3DCGやアニメーションを手がける会社もメンバーですが、 アニメーションの仕事はいつも彼らと組んでやっているのですか?
AS: そうですね。フリーランスのアニメーターとやることもありますが、彼らと組むことが多いですね。
AL: 今はどのようなお仕事を手がけているのですか?
AS: 建築用アルミニウム資材の世界的な企業、Technal社のアニメーションを手がています。
AL: 以前にもTechnal社のお仕事をやっていますね。
Client: Technal Worldwide, Agency: Antonomasia, Barcelona
AS: はい。これもその一つですが、今新しい作品を制作しています。そしてそれ以外にはミラノにあるボッコーニ(Bocconi)大学の歴史を伝えるビデオの制作に関わっています。
AL: なるほど。精力的に動画制作のお仕事をされているのですね。今後日本でも、あなたと水彩アニメーションを使ったお仕事ができるよう私たちもがんばりたいと思います。
- 2019.12.18 Wednesday
- カナザワカズヒロの5cmの世界
弊社契約のカナザワカズヒロさんは、紙を使って人物や背景を立体で制作する作家さんです。ですが、通常我々が目にするのは、完成した作品の写真であるため実物がどのくらいの大きさで、どれぐらい細部が細かいものなのかがわかりづらかったりします。実は、カナザワさんの作る作品は、人物でだいたい高さが5cm程度しかありません。さらに、画面の中に出てくる桜の木の桜の花びらや地面の芝生の草の葉にいたってはほんの数ミリといった小ささです。今回は、ご本人にその細かい制作過程や、制作の苦労話などについて伺いました。
A まずは、制作過程をざっと説明していただけますか?
K はい。では、最近作った「車椅子に乗ったおばあさん」で順を追って説明します。
- 1. まず最初に設計図としてラフスケッチを描きます。鉛筆かボールペンで線画を描いてPCに取り込み、フォトショップで色付けをします。
- 2. 次に、車椅子の各パーツを主に和紙とダンボールで作ります。棒状のものは細く切った紙にボンドを付けながら、よじって作っています。
- 3. 作ったパーツを組み立てていきます。(細かい作業ですね!)
- 4. 最後に、座椅子のシートを貼って、車椅子の部分は完成です。
- 5. 次はおばあさんですが、まずティッシュペーパーに木工用ボンドを付けながら丸め、土台を作ります。これは頭部になります。
- 6. 同じように作ったからだの部分に頭を合体させます。後々の作りやすさを考えて、頭は付けたり外したりできるように作っています。
- 7. 全体に薄く剥がした段ボールを貼り付けていき補強します。これで、乾くと固くなり、カッターで削ったりしやすくなります。
- 8. 同じように腕も作ります。指はカッターで彫りこみ、薄い和紙を貼りながら作ります。手の表情も大事なので、神経を使います。
- 9. 耳と目をさらに作り
- 10. 髪の毛もつけます。
- 11. そして、目やシワなどはカッターで切り込みを入れて表現します。この時なるべく垂直に刃を入れるのがポイントです。
- 12. 次はめがねを作ります。極細(0.5mm幅)に切った紙にボンドをつけてよじって棒状にし、それをつなぎ合わせてめがねの形にしていきます。
- 13. 顔に取り付けます。ぴったりですね。
- 14. 次は洋服です。まず地になる色の紙を貼り付けます。
- 15. 次に洋服の模様作りです。まずは、模様に使う紙(上から模様の下描き、地色の和紙、花柄の色のダンボール)を重ねて、形を切り抜きます。
- 16. そして、抜いたかたちの部分に、別の紙の切り取ったかたちをはめ込んでいきます。紙の側面にボンドを付け、接着しています。
- 17. 中心の丸いかたちも切り抜き、違う色紙をはめ込んでいきます。
- 18. できた模様を一つ一つ切り離し
- 19. 胴体に貼り付けていきます。
- 20. こうしておばあさんが完成です。
- 21. 最後は落ち葉作りです。色彩豊かに表現するために、あえてコピックで着色し、落ち葉らしさを出すためにティッシュを作って作ります。
- 22. こんなふうにいろんな色が混ざり合っているのが落ち葉にぴったりです。ハサミで1枚ずつ葉の形に切り抜きます。
- 23. これで完成です!
A(artliaison) 細かい作業の連続ですね!まさか洋服の模様を、土台となる紙に貼り付けているのではなく、はめ込んでいるとは思いませんでした!そもそも、なぜ、紙を使って制作しようと思ったですか?
K(カナザワさん) 大学で和紙を使ってランプシェードを作るというテーマの授業があったのですが、その時に紙の質感や繊維の感じが面白くて和紙を気に入った事、そして日比野克彦さんが段ボールで立体作品を制作されていたのを見て、そんな身近な素材でも芸術作品になるのが面白いと思った事などから、紙に可能性を見出した事がきっかけだと思います。
A )紙で作品を作りはじめてどれぐらいになるのですか?
K )2002年の秋頃から本格的に始めたので、17年になります。
A)それはすごいですね。もう職人技の域ですね。ちなみに、今回制作してくださった「車椅子に乗るおばあさん」はラフ制作から完成まで、だいたいどれぐらいの時間がかかりましたか?
K)約2週間くらいです。ラフを描いて車椅子に1週間。おばあさんに5日間。落ち葉作りに2日程度です。
A)これだけ細かい作業だとそれなりにかかりますよね。ところで、作品を作る上で決めていることはありますか?
K)基本的に全て紙で作る、紙の持っている色をそのまま活かす(後から着色しない)、特定の色が必要な場合は白い紙にコピックで着色した自作の色紙を素材とする、キャラクターは手のひらにのるサイズという事を決め事としてやっています。
A)制作する上で苦労する点は?
K)まず、紙にこだわって作っているため、人間や動物、植物や人工物、それぞれの質感や、らしさを出すにあたって紙の種類を変えたり、作り方を工夫しないといけないところは苦労します。例えば動物の毛並みを作るのにも一本一本の毛を植えたり、手すき和紙の繊維感を利用したり、表面をやすりで削って紙の繊維感を出したりなど工夫しています。また猫の髭や眼鏡など、細い部分の制作は細すぎると紙がボロボロと切れてしまうので難しいです。猫の髭は、最近思いついたのですが、繊維が強い手漉きの和紙を使っています。繊維が強いので細く切ってもボロボロになりません。紙の色を活かして作る点も、肌には薄黄色の和紙、髪の毛には白い和紙、スカートには段ボールという感じで色の違う紙を貼り分けて作っているので、これもサイズが小さくなればなるほど大変です。中でも洋服の柄は模様を切り抜いてはめ込んで作っているため特に苦労します。また、キャラクター自体のサイズが小さいので、キャラが持つ小道具などはさらに小さくなり、出来る範囲で制作しますが、その点も難しいと感じます。その他、木の葉や桜、銀杏などの植物の制作は葉や花びらの一枚一枚を手で切ってピンセットで組み立てたりしているため時間もかかります。写真になった時にどう見えるかについても気を使っています。
A)気の遠くなるような作業ですね。でも、お聞きしていると、苦労のほとんどが作品のサイズが小さいことによるもののように思うのですが、なぜ手のひらにのるサイズなんでしょうか? もう少し大きく作れば楽なように思いますが。
K)最初の頃に手のひらに乗る5cmくらいの人形をしばらく作っていたため、作り慣れているというのが大きいですね。サイズを大きくするとその分作り込む手間も多くなるのでもっと大変かもしれません。別の仕事で高さ15cmくらいのフィギュアを作った事もありますが、作風として紙を細かく千切って貼り付けることで仕上げていくため、大きくなった分、延々とその作業を繰り返すことになり、かなり手間と時間がかかりました。作り方、紙という素材を考えると自然と小さなサイズになるのかなと思ったりします。また小さく作った作品を撮影して拡大してみた時に見えてくる紙の質感が好きですし、小さくて思い通りにならない事で、逆に面白い形や表現になる事もあります。そういう意味で、苦労は多いですが、完成した時に報われる感覚も大きいです。
A)こんなに細かい作業が続くと肩が凝りませんか?
K)肩こりはもちろん、首や背中にも影響は出ています。以前は腰痛が辛かったです。体操したり、プールで泳いだり、整骨院に通ったりして対処しています。最近はストレートネックを指摘されてなるべく顎を引くように心がけています。
A)ある意味体力勝負ですね。でも、「神は細部に宿る」と言いますから、やはりそういった細かいところにまで手を抜かないことがカナザワさんの作品の世界感を創り出しているのでしょうね。
A)ところで、確か毎年カレンダーのお仕事をされていますよね?
K)はい。以前国際展示場でのクリエイターEXPOというイベントに参加した時に名刺交換させていただいたカレンダー会社様からのご依頼です。2013年から続いていて、今作っているもので7年目になります。毎年12か月分で12点の作品を作っています。カレンダーという事で季節感が必要なので、桜の木や紫陽花、向日葵や他にはクローバー畑など自然の植物も制作します。一枚一枚葉を切ったり、花も花びら一枚から切ってピンセットで組み立てて作りますが、背景という事で大量に必要なため大変な作業量になります。そのほかにも背景として砂浜や地面の石畳、家の瓦屋根なども制作しています。全て紙で手作りです。大変な作業の連続ですが、12か月分の作品が出来上がると達成感もあり、やりがいのある仕事だと思っています。
A)7年目ですか、すごいですね。それも、毎年手の込んだ背景の作品を12点も!
K)1年目2年目はバラバラのテーマで12か月の作品を作っていましたが、3年目からキャラクターを固定して1年のストーリーとして作るようになりました。2020年はオリンピックなので家族でスポーツなどを楽しむアクティブな1年として作りました。今は2021年のカレンダーを制作中で、今回制作過程で作った車椅子のおばあちゃんをメインのキャラクターにしてまったりした感じの1年になる予定です。
*カレンダーの作品は弊社HPのカナザワさんのポートフォリオページでも紹介しています。
*また、カナザワさんご自身のHPでは、制作過程ももっと詳しく説明されていますので、ご興味のあるかたはのぞいてみてください。
A )では、最後に、今後どんなお仕事をされたいですか?
K )たくさんの方に見てもらえる駅貼りの広告のような、スケール感のあるお仕事がしたいです。また、小説や絵本、映画など、ストーリーを作る事に関わるお仕事や、コマ撮りでのアニメーション制作にも興味があります。
A )広告のお仕事は弊社が頑張らないといけない部分ですね。あと、カナザワさんの作品はストーリーの一場面といった作品が多いので、ストーリーを作る事に興味がおありだというのも納得でした。カナザワさんの作ったキャラクターが動くのも是非見てみたいですね。
- 2018.08.15 Wednesday
- Mary Woodinの素敵な田舎の家
- デスクの前のメアリー・ウディン
アートワークスのオフィスビルを訪問した(前記事で紹介)翌日、アートワークスの所属作家であるMary Woodin(メアリー・ウディン)の自宅を訪問しました。彼女が住むのは、ロンドンから東に電車で1時間半ほど行ったサフォーク州にある田舎町。以前は農家だったところをリフォームし、野菜や花を育てながら作家活動をしています。メアリーは昨年、田舎での生活を絵と文章でまとめた『drawn to the country』という本を自費出版したのですが、その本を見るたびに、本で描かれた場所やメアリーの生活をいつか実際にこの目で見てみたいと思っていたのです。
- いました、お馴染みのニワトリ
- 本の中ではこんな風
- こちらは夏
- こちらは春でしょうか。
訪れたのは7月あたまでしたが、今年の夏はイギリスでも異常気象で、例年よりも気温がかなり高く、雨がほとんど降らない日々が続いていました。そのせいで庭の土がかなり乾燥していましたが、それでもクレマチスやダリア、ラベンダーなどの花が美しく咲いていました。
- 素敵な玄関です。
- 玄関の前にはクレマチスが咲き誇っていました。
敷地はとても広く、広い芝生、花壇や畑、そして小さな池まであります。これだけの広さの庭を手入れするのはさぞかし大変だろうと思うのですが、それを日々こなし、さらには創作活動の時間もしっかり確保しているメアリーにすっかり感心しました。
- 裏庭から見た家
- ラベンダーに集まる蜂たちの羽音のうるさいこと。
- さりげなく置かれたベンチが絵になります。
お昼はメアリーお手製のキッシュとサラダを、庭の大きな木の下でご主人のアンドリューさんも一緒にご馳走になりました。メアリーが作ってくれたランチはとても美味しく、主婦としての腕前もなかなかのもの。ご近所さんからケータリングを頼まれることもあるそうです。さらに自然の中でリラックスしながら食べるランチは格別で、話が尽きることがありません。もともとロンドンに住んでいたお二人ですが、お子さんができたことをきっかけに、この田舎町に引っ越してきたそうです。子供たちが小さな頃は毎日この広いお庭で近所の子供も一緒に遊び回っていたそう。そうやって育てた3人のお子さんもすっかり成長し、上のふたりは今ロンドンで大学生活をおくっているそうです。
- この木の下でランチを食べました。
- この畑で色々な野菜を育てています。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、気がつけばもう帰りの電車の時間。慌てて、スタジオを見せてもらうことに。メアリーのスタジオは同じ敷地内の別の建物にあります。同じ敷地内でも建物が違うことで、切り替えがスムーズにでき、制作に集中できるようです。部屋の半分でメアリーが、もう半分でご主人のアンドリューさんがそれぞれ制作活動を行なっているということでした。本当はもっと作品について聞きたかったのですが、残念ながらその時間はなく。続きはまたの機会ということで、メアリーとアンドリューに別れを告げ帰途につきました。でも、実際にメアリーが生活し、制作する場を見ることができたことは、彼女の作品を理解する上でとても貴重な経験でした。この経験を元に、これからも彼女の作品を多くの人に紹介していきたいと思います。
- このデスクで作品は制作されています。
- 壁にはメアリーが描いた作品が飾られていました。
- 2018.08.01 Wednesday
- The Artwork(アートワークス)訪問
- 右がオーナーのルーシーさん。左がスタッフのアレックス。
去る7月4日(水)に弊社の山本が、提携するロンドンのエージェンシー、The Artworks(アートワークス)のオフィスを訪問しました。実は、弊社の前身である株式会社アマナのイラストレーション部門が最初に扱ったのは、日本人作家ではなく、このThe Artworksの扱うイギリスの作家たちでした。ですので、お付き合いはかれこれ30年近くになります。その間、The Artworksのオーナーが替わったり、弊社がアマナから分社して独立したりと色々ありましたが、その間も途切れることなくおつき合いを続けてきた大変愛着のあるエージェンシーです。とはいえ、The Artworksのオーナーが現在のLucyさんに替わり、新しいオフィスに移ってからは一度も訪れることがなかったため、直接会うのはなんと今回が初めて!お互い「やっと会えましたね!」と初対面を喜びました。
The Artworksのオフィスは東ロンドンのShoreditch(ショーディッチ)と呼ばれる、今最もエッジーなエリアとして注目されているエリアにあります。数十年前は治安が悪かったようなのですが、その後多くのクリエーターやアーティストが住むようになり、町のいたるところがグラフィティアートで覆われ、おしゃれなお店やギャラリーが建ち並ぶ非常にユニークなエリアです。
The Artworksのオフィスはそんなエリアにあるビルの一室にありました。
- オフィスが入っているビルの入り口
- アートワークスのオフィスの入り口
壁面には天井まである本棚が作りつけられ、契約作家さんのポートフォリオや手がけた書籍などが所狭しと並んでいます。その中で特に私の目を引いたのは、作家のポートフォリオです。弊社も20年ぐらい前は、作家ごとにポートフォリオを準備していたものですが、それがホームページに取って代わって、今ではポートフォリオを見せる機会はほとんどありません。そのことをルーシーとアレックスさんに聞いたところ、彼らも一時期はホームページで作品を見てもらっていたそうなのですが、ここ最近になって再びクライアントからポートフォリオを見せて欲しいと言われることが多くなったとのこと。というのも、The Artworksが手がける仕事の多くは書籍の表紙や挿絵などのエディトリアルのお仕事。なのでクライアントは、モニター上ではなく、実際に紙に印刷あるいはプリントされた作品を見て判断をしたがるのだそうです。納得ですね。ですが、このポートフォリオが結構重いのです。そして、1回のミーティングに何冊も持っていかないといけないため、スーツケースに入れて運んでいるとのことでした。新しいテクノロジーが発達しても、必要とあれば古いスタイルを貫くところがイギリスらしいと感心しました。
- アートワークスのオフィス
- アートワークスの作家が手がけたお仕事
- ポートフォリオ